神奈川県緊急財政対策案に対する県職労連声明

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声明

「財政赤字過大見込み」で脚色された「財政危機」論 県民サービス切捨て職員負担の一方で、地域経済活性化への展望なき「成長エンジン」のための財源確保か

 9月27日、黒岩知事は、神奈川県緊急財政対策本部が調査会(神奈川臨調)報告を踏まえ、まとめた「神奈川県緊急財政対策案」を発表しました。

「神奈川県緊急財政対策案」の策定について(神奈川県ホームページへ)

 対策案は2013年度、2014年度の2ヵ年で1600億円の財源不足が生じると試算。介護・措置・医療関係費の加速的増加と深刻な公債費の増嵩の状況を放置せず、「抜本的な見直し」を行い、中長期的な展望の下に今後の政策課題に対応できる行財政基盤の確立をするとしており、個々の「県有施設」「県単独補助金」の見直しについて具体的な対策案としてまとめられています。

 対策案では、取組みをすすめる基本スタンスとして「聖域を設けずに、ゼロベースから徹底的に見直しを行う。」「県民サービスに影響を及ぼす取組みであることから、職員に相応の負担を求める」「県民・企業・団体・市町村との危機感共有に努め、関係者の理解・協力を得ながら取組みをすすめる。」としています。

本当に「財政危機」なのか。財政構造解決は県民サービス削減でなく財源確保から

 これまでも予算編成を前に数百億円規模の財源不足が予算依命通知等で出され、事務事業の見直しが行われてきました。しかし、年度当初の不足見込みも含め、最終的には交付税(臨時財政対策債含む)増と人件費の抑制(定数削減等)で財源を確保し黒字が生じています。その黒字は財政調整基金や債権管理基金に積増し。対策案では基金取崩しで2012年度も単年度実質収支は赤字と見込んでいますが、この間、基金積立という実質的黒字が生じていることは事実です。県債も一般会計規模の2倍とされていますが、一般県債残高は2兆円を切り、ここ10年間で最小額になっており、県民一人当たりの債権額は全国最低です。

 また、対策案の1600億円財源不足見込では、義務的経費の増(基準財政需要額の増)にもかかわらずその増分に見合う交付税(臨時財政対策債)増額は全く見込んでおらず、義務的経費の増分=財源不足額となる構図=財政構造を前提に赤字が作り出されています。

 確かに交付税が他の都道府県に比べ少なく、臨時財政対策債(国の借金の肩代わり)を多く抱えながら義務的経費が増大する財政構造を神奈川県はもっており、財政運営が厳しいのは事実です。硬直化した中で政策的経費が捻出できない状況もあります。しかし、そうした財政構造を解決する方法は、税財源の地方移管や独自の課税対策・財源確保など、安定的な税財源を確保する施策の展開です。提案では、財源確保策は「中長期的な取組み」として後景に追いやられていますが、財政構造問題に責任のない県民や職員への負担を優先する、今回の対策案を認めることはできません。

県民サービス、いのちとくらし、雇用と営業をまもる施策の維持を前提にした対策を

 今回の対策案は「県民サービスの低下」を前提に、全ての施策を「ゼロベースで見直す」としており、そこには県政として果たさなくてはいけない役割といった記載は殆どみられません。そして、職員には「県民サービスの低下」を進めていくために、その広告塔としての賃金カットを迫っています。

 この間の「財政不足」宣伝の繰り返しと県財政状況(決算)を見てきた多くの県職員は、今回の財政危機の「危機感」を共有できていません。むしろ、そうした中で、県民サービスの低下を招くことには反対です。

 また、「県有施設・出先機関の見直し」「県予算の見直し」は、見直し方向も含め対策案に記載されている内容は、すべて緊急財政対策本部で結論が出されたものであり、職場討議・職員参加は殆ど皆無といっても過言ではありません。

 そうした対策案の推進をどうして県職員が率先してすすめることができるのか。記者発表等にあわせ、事業課各課・所属に待機命令が出されたようですが、説明責任は全て「緊急財政対策本部」において行っていただきたいというのが、多くの県職員の考えです。

 この間、私たち労働組合は2度「賃金カット」を経験してきています。しかし、そのいずれもが人事委員会勧告水準を基本に「県民サービスの維持のための職員としての自主的な協力」として行われてきたものです。「県民サービスの低下」を進めていくための賃金カットは認めることはできません。

県民サービス・市町村との共同の闘いで対策案を撤回させよう

 県有施設や県予算の見直しは「ゼロベース」で進めるとしていますが「ゼロ」ではありません。「必要なもの。」「守らなくてはいけないもの。」「県でなくてはできないもの。」を、県民・団体、市町村と議論し、知事に提言する削減反対の取組みを職場や地域から進めることで、県民サービスを維持させることはできます。

 これから県議会での議論とあわせ2013年度予算編成作業がはじまります。「削減ありき」ではない「県民サービス」第一の見直しとなるよう、職場からの取組みを進めていきましょう。

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