県政を住民奉仕の機関から一部大企業の利益に供する機関に変質させる「緊急財政対策」方針を撤回させよう

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声明

声明(PDF版)

 8月27日、神奈川県は「緊急財政対策本部調査会中間意見を踏まえた神奈川県緊急財政対策の取り組みの方向性について」を議会に報告した。

 この報告は、「中間意見」を受けた時に県知事が「非常に厳しい内容だが重く受け止め、意見を大胆に生かしていきたい」と述べたように、ほぼ中間意見を踏襲する内容となっている。

 具体には、①聖域を設けずゼロベースで見直す、②県民サービスに影響を及ぼすことから職員に相応の負担、③県民・企業・団体・市町村との危機感を共有し、理解と協力のもとすすめる、という基本スタンスのもとで、①県有施設の原則全廃、②市町村・団体補助金の「廃止」または「削減」、③職員数減、給与削減、退職手当削減による人件費抑制、④教育のあり方の検討、の4つである。

神奈川県緊急財政対策本部 – 神奈川県ホームページ

 私たちは、神奈川臨調中間意見に対する問題を指摘してきたが、今回出された県としての財政対策の方向性においても、その問題点はなんら変わっていないばかりか、さらなる問題も明らかとなっている。次にその点を表明する。

 第一に、県としての方向性決定のプロセスに、県民意見を集約する手法がまったくとられなかったことである。「県民サービスに影響を及ぼす取り組み」と自らが言っているとおり、その重大性を口では指摘しておきながら、県民への説明や意見反映を行わなかったわけであり、大問題である。行政とは、住民の福祉の向上のために、住民ニーズを把握し、「健康で文化的な生活」保障のために行政として何ができるかを問いながら、時には住民とぶつかりながら施策・事業を進めており、今後もそうあるべきである。ところが今回の手法は、外部有識者6名による意見が全てで進められてきた。県議会をはじめ県庁内外から戸惑いや不安・怒りの声が寄せられたにもかかわらず、その声に耳を貸すことはなかった。これでは独裁である。独裁的手法であるからこそ「血反吐を吐いても」「極めて重く受け止めなければいけない」と神奈川臨調を天にまで持ち上げている。 あらためて県民(団体)からの意見を反映する機会を設けるべきである。

 第二に、「大胆にしっかりとご意見を生かすように頑張っていきたい」と意見表明する背景に根拠も曖昧な財政危機を挙げていることである。「平成25年・26年の2年間の財源不足額が1650億円に上り「企業であれば破綻寸前」」というが、神奈川県は全国でも財政力指数は 第3位、個人別借金額は全国最小の優良県である。その優良県をして「財政危機」というなら、他の全国の道府県は「破綻寸前または破綻状態」といわなければならない。この虚構の「財政危機」を唯一の理由に県民サービスに多大な影響を与える施設全廃、補助金廃止を、何の相談もなく一方的に通告することを独裁といわずして何というのか。

 第三に、その結果だされた「県有施設全廃、補助金廃止」方針は、県がこれまで市町村・団体、あるいは直接県民に提供してきた行政サービスをゼロにする内容を含む、いわば県政の解体というべき内容で、県政史上かつてない暴挙である。県有施設は、体育館や図書館、公園、社会福祉施設など県民が利用する施設や、県税事務所や保健福祉事務所、県政総合センターなど、県の出先機関もあり、全部で239施設に上る。これらを「原則廃止」とすれば、県として必要な行政ができなくなることは火を見るより明らかである。また市町村・団体補助金は重度障害者医療費補助、民間保育所運営費補助など社会福祉・医療・教育関係がそのほとんどを占めている。県は補助金助成金の廃止を契機に市町村に事業そのものの廃止を迫ることを明言しており、虚構の「財政危機」を理由に真に必要な住民に対する県政や市町村自治体の役割を放棄することは許されない。

 第四に、財政危機を脱するために「ライフイノベーション、それからグリーンイノベーション、第4の観光の核など、経済のエンジンを回していくことが非常に大事」とし、住民の福祉よりも一部大企業の利益を優先する姿勢を露骨に表したことである。同日議会に報告した「これからの神奈川県のあり方(素案)」では、神奈川県を1つのエリアに、権限委譲と規制緩和による新たな特区制度の活用と、市町村への権限委譲を通じた「神奈川州」構想を打ち出している。県の役割を住民の福祉の向上から経済成長のための一部大企業優遇へと県政の変質を目指すものとなっている。

 最後に、「私たちの給料も減らすのでご協力を」と、まったく別の次元の話を一緒くたにし、一方で公務員バッシングを行い、翻って住民いじめを行わせようとしている。これは「住民の幸せなくして自治体労働者の幸せはない」という自治体労働者の誇りと県職員としてこれまで築いてきた県政を踏みにじるものである。

 私たちは、県民利用施設の役割、出先機関の必要性、市町村・団体補助金の意味と重要性を語り、自らの仕事への誇りをかけてこれまでやってきた県の責務を住民の中に広め、県民、施設利用者、団体、市町村など広範な層と連帯して乱暴な県政解体方針を撤回させる運動を進める決意を表明する。

2012年9月11日
神奈川県職員労働組合総連合

(関連情報)
グローバル企業奉仕のために県の財産を切り売りすることは許されない(県職労連声明)

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