2014人事院勧告

 提案・声明・見解

声明

憲法に規定される存在意義・使命発揮が問われる人事院勧告。生涯賃金大幅削減と公務の性格を歪める「給与制度の総合的見直し」は撤回を

勧告の内容と解説・問題点

 8月7日(木曜日)国人事院は内閣及び国会に対して2014年給与勧告を行った。

 その内容は、若年層に重点を置きながら月例給で平均1,090円(0.27%)、一時金も0.15月引き上げるというもので、2007年勧告以来、7年ぶりのプラス勧告となった。

 あわせて、昨年2013勧告以来、検討されてきた「給与制度の総合的見直し」については、2015年4月から3年間(2018年3月)の経過措置を設けながら、俸給表水準について若年層現行維持しながら50歳代後半層で最大4%削減で平均2%を引下げ、あわせて地域手当3%~20%引上げと中央省庁職員・キャリア組手当の増額を行うとした。

 人事院は労働基本権制約の代償機能という基本的な役割をもちながら、国民の期待に応え、公務員が全体の奉仕者としてその職責を果たすことができる勤務労働条件を整備するという使命をもっている。しかし、今回の勧告内容は、それらの役割使命を完全に放棄し、現政権の安倍政権にとって都合のよい国家組織とそのための人材確保を図ることに主眼が置かれ、生涯賃金の削減と公務の性格を歪めるものであり、一部の権力者ではなく全体の奉仕者たる私たちは断じて認めることはできない。

 7月29日に厚生労働省は、2014年春闘における主要企業の賃上げ状況を報告したが、その内容は平均で前年比1233円増の6711円、率も0.39ポイント上昇し2.19%と金額、率とも1999年以来15年ぶりの高水準となった。

 公務はこの7年間、民間賃金が上昇しながら「わずかな公民較差」を理由に賃金水準は置かれ続け、その積み残しがあるにも関わらず、今回の勧告における賃金引き上げ率は、民間の春闘相場を大幅に下回るものである。

 政府は、戦後最高利益を上げる大企業に対する国民・労働者の怒りを背景に「賃上げ要請」を行ったが、公務員へは大企業減税の財源確保と消費税引上げの露払いとして人件費削減を必要とした。そうした中、今回、プラス勧告が出されたことは是とするところであるが、その引き上げ率を見る限り、政府の意向を踏まえた勧告であると言わざるを得ない。

 2005年勧告の「給与構造見直し」に続く、今回の「給与制度の総合的見直し」は、将来に渡り公務員の人件費を削減するものであるばかりか、公務の中に地域間、職種間、年齢間、昇格者とそうでない者の較差を拡大するものである。

 2014年給与改定と俸給表水準の見直しは、いずれも若年者に配慮する一方、55歳後半層に対しては厳しいものとなっている。「民間動向を踏まえた年齢間較差の是正」というのが理由とされている。

 生活保護基準に近い初任給・若年者の給与水準の引上げは、私たちもこの間、強く要求してきたところであり若年者に重点が置かれたことは評価するところである。

 しかし、40歳代後半層からは昇給額が確実に削減されており、地域手当が上がっても昇格しない場合、現行に比べ給与水準が下がることになる。国と異なり地方における公務職場では40歳代後半から50歳代半ばの者が業務の中核を占めており、そうした者の賃金水準が下がることは行政の停滞を招きかねない。また、昇任昇格については県でも絞り込みが進んでいるが、時の為政者に気に入られ昇格が行われないと、生涯賃金では1000万円以上の削減につながり、若年者にも将来設計という点でマイナスの影響がでることは明らかである。

 また、地域手当の支給割合による地域間格差の拡大は、神奈川県において職場によって賃金水準が異なる事態が生じる可能性がある。本庁勤めはいいが出先は本庁に比べ10%以上賃金が下がる危険性もある。今回、人事院は2005年勧告と同様の賃金センサスをもとに地域手当の支給地区分を行っているが、勧告を出すにあたり行われている調査方法・調査対象とも異なったものであり、今回の地域手当見直しは、地方を切り捨て出先機関の公務員の賃金を下げるため行われたと言わざるをえない。

 その一方で、政府に都合の良い人材育成に向け、中央省庁の職員やキャリア組についてはその給与水準を維持改善する方向で諸手当等を見直し、公務部内の較差を拡大することとなった。

 公務公共労働者の賃金水準は、全体の奉仕者として国民県民のために仕事をするための条件として確保されるものであり、そのための人材を確保育成できるものでなくてはならないと考える。そうした点で、今回の勧告は極めて不満のあるものと言わざるを得ない。

 人事院勧告を受け、県人事委員会でも勧告に向けた作業が今後本格化するが、私たちは県人事委員会が、その使命である労働基本権代償措置と全体の奉仕者の勤務労働条件確保という視点から、県の職場実態を踏まえた勧告を出すことを強くもとめるものである。

 想定給料表など、詳しい情報は、県職労連情報No.78(学習資料のページ)をご覧ください。

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