「アーティスト」監督:ミシェル・アザナビシウス


2011年 フランス映画

 「今年最高の1本」というキャッチフレーズには踊らせられないが、白黒スタンダード画面でサイレント映画ということ、本年度アカデミー賞の作品賞、監督賞をあのマーチン・スコセッシを押しのけて受賞したということで興味を持った。

 舞台は1927年のハリウッド。サイレント映画の大スターが新人女優を見初めた。しかし映画界はサイレントからトーキーへの移行期。サイレント映画の芸術家(「アーテイスト」)として矜持を持つ彼は映画界を去る。一方彼女は新興トーキー映画の大スターへと邁進してゆく。彼女は自分を見いだした彼を忘れられず、彼の没落ぶりに心を痛める。会社での発言権を得るように成長した彼女は彼に救いの手を伸ばした…。

 この映画はサイレントといっても音楽を入れたサウンド版である。しかし随所に昔のサイレント名画を思い出すシーンがある。髪を振り乱すアップはエイゼンシュタイン、目と口の感情表現はスタンバーグなど、映画好きにはたまらない作品となっている。ラストシーンのタップ・ダンスを踊る二人には、同じくトーキー移行期の人間模様を扱った「雨に唄えば」を思わせるなど、実に楽しい作品となっている。

 監督も主演男優もフランス人の、れっきとしたフランス映画である。フランス映画が米アカデミー賞作品賞を受賞したのは始めてという。

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