「深夜の告白」 監督:ビリー・ワイルダー


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食指の動く映画が上映されていない時は、所蔵のコレクションを鑑賞している。湿度の高い夜にはやはりミステリーが最高だ。

この映画のスタッフが凄い。原作は米国犯罪小説の代表的作家のジェームス・ケインで、彼の代表作「郵便配達は二度ベルを鳴らす」は過去において二度映画化され、特にビスコンテイ版は名高い。脚色は探偵フィリップ・マーローシリーズで知られるレイモンド・チャンドラー。監督のビリー・ワイルダーは「情婦」で原作者のアガサ・クリステイから絶賛されたセンスを持つ。

保険金詐欺と殺人事件の顛末を描いたこの作品は、犯人が事件の顛末を録音する場面から始まる。完璧であったはずの計画がいかに無惨に終息してしまったのか…。白黒画面に描かれる愛と欲、光と影のコントラストは「第三の男」の先行作品と云えよう。

監督のワイルダーは、ヒッチコックやジョン・フォードと並び称される米国映画界の巨匠だが、「私は芸術映画を作らない」と明言し生涯娯楽映画に徹した。「サンセット大通」や「第17捕虜収容所」、モンロー主演の「お熱いのがお好き」、「アパートの鍵貸します」等の名作を残したが、母親はアウシュビッツのユダヤ人捕虜収容所で亡くすという悲惨な過去を持つ。2002年96歳で没。

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