「毒薬と老嬢」 監督:フランク・キャプラ


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 ブロードウエイで4年間も連続上演された舞台の映画化で、今や古典的名作とされている。70年以上も前の制作ながらサスペンス・コメデイの傑作として充分に鑑賞に耐えうる作品である。監督はフランク・キャプラで、戦前の日本の映画監督達からも支持されていた名匠である。代表作は「或る夜の出来事」「オペラ・ハット」「我が家の楽園」などでアカデミー監督賞を3回受賞している。

 舞台はブルックリンの山の手の大邸宅。ここに住むちょっと変わった老姉妹が主人公。彼女達は邸宅の一部を貸部屋としている。

 看板を見て訪ねてくる孤独な異性の老人を救済のためとして毒死させては地下に埋葬している。そう、彼女たちは精神異常者なのだ。彼女達には3人の甥がいるが、そのうち二人も明らかに変わっており、健常者は演劇評論家となっている甥だけである。彼が物語の狂言廻しとなって事件の終息に奔走するのだが、そのコミカルさがこの映画の見どころとなっている。主演したケーリー・グランドは、その後に主演した「北北西に進路を取れ」や「シャレード」でも同様な役回りを演じているが、その独特な役者振りの原点がこの「毒薬と老嬢」である。

 この映画は1944年に作られた。日本では戦争末期の昭和19年である。国策映画の制作さえ底をついていた時期に、こんな大らかで不思議なサスペンス・コメデイが作られていたとは。アメリカの大国ぶりに、今更ながら驚かされる。

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