「悲しき小鳩」監督:瑞穂春海
旅先などで生地を問われると「生まれも育ちも美空ひばり」と答えることにしている。聞き手は直ちに納得するが、死後二十余年経てもなお褪せぬひばりの知名度には驚く。
さて、黄金町のミニ・シアター「シネマ・ジャック&ベテイ」では毎月1回2日間に渡り「ヒバリチャンネル」の傍題でひばり映画の上映を続けている。
物語の主人公はサーカスの人気歌手まり子。ピエロ役の父と旅暮らしを続けているが、離れて暮らす母を呼び戻そうと計画を進めている。しかし、父が突然致命的な負傷をする。はたしてまり子の運命は…?
ひばりの作品はいわゆるB級映画のジャンルとされているが、この作品も涙と笑いと歌とで理屈抜きに楽しめる映画に仕上がっている。ひばりは生涯165本の映画に出演しているが、これは彼女が15歳の時の作品だ。
監督の瑞穂春海は明治44年長野善光寺塔頭の長男として生まれた。東京帝大卒業後、松竹蒲田撮影所に入り、昭和15年監督となり、生涯に68本の映画を遺した。ひばり映画はこの作品のほか「あの丘越えて」などがある。引退後故郷に戻り没した。
この映画には今なお現役で頑張っている横浜出身の岸恵子も出演している。この時は二十歳で、翌年「君の名は」で大ブレークし、大女優の足がかりを得た。彼女もひばりも昭和20年5月の横浜大空襲で被災した体験を持つ。(1952年 日本)
2013年1月20日