「人生の特等席」監督:ロバート・ロレンツ


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 映画のチラシに題名に負けないくらいの大文字でクリント・イーストウッドとあったので、てっきり彼の監督作品と思いこんで観に行ったが違っていた。

 監督のロバート・ロレンツは、永くイーストウッド映画のプロデユースを勤め、監督としては新人だそうな。しかし、手堅く端正な作品づくりには感心した。

 主人公はメジヤー・リーグの老スカウトマン。新人の発掘にはコンピュータや記録データに頼らず、もっぱら自分の眼力を信じ全米を飛び回る生活を送っている。当然家庭など顧みず一人娘との仲は険悪だ。そんな昨今、加齢による視力の衰えが彼を襲う。それを知った娘は…。

 黒澤明の「用心棒」のリメイク版(当時は盗作と騒がれたが)、「荒野の用心棒」で登場したイーストウッドだが、前作「グラン・パ」から老い役に徹し始めた。しかし、老いを隠さぬ表情や仕草はむしろ颯爽としている。

 老いなりの居場所に誇りを持って居直る、それが人生の特等席ということか。(2012年 アメリカ)

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