「推理作家ポー・最後の5日間」監督:ジェームス・マクテイーグ


フィルムの画像

 エドガー・アラン・ポーが1841年に発表した「モルグ街の殺人」は、史上初の推理小説とされている。この作品で描かれた天才的な探偵像、物語の怪奇性と結末の意外性、物語の前半で推理の材料を披露する構成、不可能犯罪のトリックなど実に見事な小説であった。

 これらポーの創造した数々は彼に続く「シャーロック・ホームズ」のコナン・ドイル、「名探偵ポアロ」のアガサ・クリステイなど後世の作家達に「推理小説の約束事」として受け継がれたように、まさにポーは偉大な推理小説家であった。

 映画はポーの小説どおりに殺人を重ねる模倣犯とポーとの対決を、ポーの40年という短い生涯の最後の5日間を限り描く。10月の陰鬱なボルテイモアの映像のもとに交わされる推理戦は実に面白く、最後まで観る者を飽きさせない。

 推理小説の評価の低かった当時において晩年のポーは貧困にあり、その死因も確かではない。しかし20世紀に入ると文名はあがり、その名を冠したエドガー・アラン・ポー賞が設立された。

 小説部門では日本の東野圭吾や桐野夏生の作品がノミネートされたが受賞までには至っていない。世界を驚かす作品を日本の推理小説家達に期待している。また、映画部門では黒澤明の「天国と地獄」が受賞しているが、黒澤ファンとしては当然のことだと思っている。あれ以上の推理映画を洋の東西を問わず見たことがない。

2012年 アメリカ

« »