「未来につなげる文化財」神奈川の文化財の未来を考える会第7回総会開催
12月9日、横浜市吉野町市民プラザで、神奈川の文化財の未来を考える会総会が開催されました。前知事の「かながわ考古学財団廃止方針」を受けて、会が結成されてから7回目の総会となります。
考古学財団は2011年4月に県の第3セクターを離れ、新法に基づく公益法人として新たなスタート切っていますが、県の埋蔵文化財調査体制の変更・民間導入により、遺跡の単年度単位の細切れ調査によって、非効率な調査や正当な遺跡の評価が出来ないなどの問題が生じています。
総会に先立ち挨拶に立った神田委員長は、県では県有施設の原則全廃方針で、図書館の廃止など県民利用施設の廃止や委託化などが検討されている現状を報告。職員の労働条件の問題だけでなく、公の担う役割や県民サービスの視点で県民・住民とともに運動を進めていく必要性を訴え、考古学財団廃止問題での取組みは大きな教訓であり、文化財の問題についても今後も会とともに運動を進めて行きたいと述べました。
総会ではこの一年、会として取り組んだ東日本大震災被災文化財の復旧支援募金活動などの活動報告、募金に留まらない被災地支援や文化財を後世に伝えていくための幅広い活動などを提起した次期方針を採択しました。
総会後、文化財保存全国協議会常任委員の勅使河原彰氏による記念講演が行われました。かつて文化財保護法が議員立法として成立し、国民の要望の中で強化が求められ、また、住民と行政の研究者が共同して遺跡保存運動が進められてきた歴史と、新自由主義が台頭してきた1980年代以降の開発の中で、文化財保護行政が弾力的運用という方針で後退して来ている現況を明らかにしました。その上で、高度経済成長期の大規模開発で生まれた都市の空洞化が進む一方で、川越市など古い町並みや文化財、遺跡を活かした町づくりを実践している自治体が活気ある町として注目を集めるようになり、そのような地域では住民と行政・研究者の共同が進められていることを紹介しました。
討論では、東日本震災被災地の復旧工事が進み、埋蔵文化財の保護、調査は待ったなしの状況にあるとの認識の中、人的支援や図書や機材の提供、普及活動など可能な支援のあり方や、引き続きの情報収集の実施について議論しました。また、埋蔵文化財全体の問題として遺跡を正しく評価し、活用していくための仕組みづくりなどについて意見交換を行いました。
2013年1月25日